ファーストネームの使用を強要
物議をかもした書「
悪魔の詩」の著者
サルマン・ラシュディ(
Salman Rushdie・英)氏が、“実名”を巡って
Facebookと対立、長い戦いの末、本人の希望がかなったことを、AFP BBNewsが伝えた(15日)。記事によれば、事の発端は、
ラシュディ氏が
Facebookのプロフィールで、ファーストネーム「
アフメド」ではなく、世界的に通用している「
サルマン」を使用することを希望したこと。
ラシュディ氏はまず
Facebookから「本人でない」と疑われた。これはパスポートのコピーを
Facebookに送ることで解決したが、今度はパスポートに記されたファーストネーム「
アフメド」を使用するよう指摘され、プロフィールを勝手に「
アフメド・ラシュディ」とされてしまったという。
12万超のファロワーの後押しで勝利
ラシュディ氏はこれに対し、
「私は世界中でサルマンとして知られているのに。ばかどもめ」
と激怒、
Twitterで
Facebook創設者
マーク・ザッカーバーグ氏との連絡を試みたが、かなわなかったため、自身のファロワーが
12万人を超える
Twitterで現状を訴えるべく、
「F・スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald)が#Facebookを使っていたら、フランシス・フィッツジェラルドと名乗るよう強制するのかい?」
などとツイート、その結果、ついに
Facebookが折れた。
15日、
ラシュディ氏は
Twitterに、
Victory! #Facebook has buckled! I'm Salman Rushdie again. I feel SO much better.(略)Thank you Twitter!(勝利!Facebookは屈した。再びサルマン・ラシュディに戻った。最高だ。ありがとうTwitter!)
と投稿した。その後、
Facebookからは謝罪があったという。
余録:「悪魔の詩」と表現の自由
「
悪魔の詩」は
イスラム教を冒とくしているとされ、89年、イランの最高指導者
ホメイニ師は著者
ラシュディ氏に「
死刑宣告」をした。Wikipediaには日本版の訳者
五十嵐一氏が暗殺されたことも記されている。
アメリカでも書店からは回収され、多くの図書館に対しても、イスラム教徒から閲覧禁止や蔵書からの抹消などの要求があったという。このあたりのいきさつについては、サイト「
カレントアウェアネス・ポータル」に詳しい(下部にリンク)。
同サイトによれば、
ALA(
アメリカ図書館協会)は「
表現の自由」を守るという立場を貫いており、「死刑宣告」を出した
ホメイニ師に対しても抗議をしている。イスラム教徒の学生から抗議のあった
オハイオ大学も、この
ALAの立場に準じており、
「大学は様々な宗教団体の持つ敏感さを理解するものである。しかし,その理解をもって学内における学問追求や知的活動の基準とすることはできない。」
とコメントしている。アメリカの図書館のアカデミックな意味での「表現の自由」「読書の自由」を守ろうとする強い意志が感じられる。

AFP BBNews
『悪魔の詩』のラシュディ氏、フェイスブックと実名規約めぐり衝突Slaman Rushdie
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CA611 - 『悪魔の詩』とアメリカ図書館―表現の自由、読書の自由― / 本吉理彦Wikipedia
悪魔の詩