“不満”を収集したデータセットを研究者に無償提供
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)と株式会社不満買取センター(FKC)は25日、研究者らへのデータセット提供で提携し、FKCが運営する「不満買取センター」で買い取られた“不満”と投稿者のデータを、NIIが「不満調査データセット」として、研究コミュニティーに無償提供する取り組みを開始したことを発表した。
FKCでは「不満のない社会の創出」を目指し、一般生活者における不満意見を買い取るかたちで収集、意見発信者の情報とともに分析して、企業や団体における意思決定、製品改善に役立てていく支援事業を展開している。
近年では政府機関も、Webから獲得可能なデータを用い、政策決定に活かしていく方向性を打ち出しており、Web上のデータを利用する動きは今後も進展していくことが予測されるが、評判情報などに関しては、テキストで記述されたデータを入手できるソースが限られており、入手できたとしても、そのデータを利用可能な状態にするためには多くの労力が必要となったり、その意見を発信した人物に関する背景情報がなく、効果的に反映させていくことが難しかったりすることがしばしばだという。
その点、FKCの「不満買取センター」サービスは、一般生活者の不満意見のみをひろく収集しており、発信者の情報収集も積極的に進められていることから、ここで得られた“不満”データはWeb上の評判情報に関する解析・分析に適したデータセットと考えられ、研究コミュニティーへの公開が有益であると判断された。
約25万件の“不満”を活かす!
今回、提供されることが決まったデータは、2015年3月18日から同年8月31日までに投稿されたデータのうち、FKCによる解析が完了している“不満”投稿約25万件と、その投稿者である会員ユーザー約2万人分のプロフィール情報。これを「不満調査データセット」として、NIIのデータセット共同利用研究開発センター、情報学研究データリポジトリ(IDR)を通じて無償提供する。
なお提供データは、特定の企業や個人につながる情報や、意見投稿者を特定できるような個人情報は一切含まず、「不満買取センター」で会員が閲覧できるオープン情報に限定されている。
NIIでは近年、このIDRなどを通じ、情報学研究に有用なデータセットを整備して研究者に提供するとともに、データセットの構築とその活用基盤に関する研究開発を進める「データセット共同利用研究開発センター」を新設し、研究コミュニティーへのビッグデータ提供を推進している。また、大規模な実データと最先端の情報技術を活かしたデータサイエンス研究も加速させており、FKCはこれらの取り組みに賛同、今回の提携が実現した。
NIIは、今後もデータセットの拡充とその共同利用を深化させるための研究開発に努め、より多くの研究者が自由な発想で活用できるシステムプラットフォームの構築を目指す。一方のFKCは、データ提供により、人工知能や自然言語処理研究の発展に寄与したいと考えるほか、同社のビジョンである、不満意見を用いたデータドリブンな意思決定での「不満のない社会の創出」が加速的に進むことを期待するとしている。

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所/株式会社不満買取センター ニュースリリース
http://www.nii.ac.jp/userimg/press_20160525.pdf情報学研究データリポジトリ「不満調査データセット」
http://www.nii.ac.jp/dsc/idr/fuman/fuman.html「不満買取センター」 公式サイト
http://fumankaitori.com/