日立製作所とKDDI総合研究所が技術開発に成功
株式会社日立製作所(以下、日立)と株式会社KDDI総合研究所(以下、KDDI総研)は11日、スマート端末に搭載されたカメラで撮影した手のひらの皮膚紋理である掌紋から、ユーザーの電子署名生成とその検証を実行可能とするPBI技術を開発したと発表した。顔認証と組み合わせることで、これまで以上に簡単で安全な“手ぶら決済”を実現できるとしている。
今回、発表された掌紋向けPBI技術(Public Biometrics Infrastructure・公開型生体認証基盤技術)は、汎用カメラで撮影した個々に異なる掌紋から生体情報データを取得し、電子署名に必要となる秘密鍵を一時的に生成して利用できるようにする。
通常はその管理に十分な配慮と注意工夫が求められる秘密鍵の手間を不要にしつつ、重要な情報の漏洩やなりすましを防止する高度な暗号技術の応用、確実な本人認証の仕組みを構築可能とした点がポイントだ。
認証用の専用装置も必要としない仕組みであるため、いつでもどこでも、スマートフォンやタブレット端末さえあれば、電子商取引やネットバンキングなど、さまざまなオンライン取引の安全な本人認証がごくスムーズに実行できる。
顔認証による対象者の検索と組み合わせ、1台のタブレット端末に組み込むことも可能なため、複数の生体情報を用いるマルチモーダルでの公開鍵認証を実現、実店舗の店頭でも、セキュアで利便性の高い手ぶら決済を手軽に導入できるとも考えられている。
よりスマートな認証、決済で社会を支える!
この掌紋向けPBI技術は、撮影角度や環境など一定の揺らぎを含む生体情報を、安全な形式で電子署名に使えるデータとする日立独自のPBI技術と、KDDI総研が開発した汎用カメラでの掌紋認証技術を組み合わせて完成されている。
この技術においては、掌紋画像をどこにも保存しないため、その画像を使うことなく位置ずれを適切に補正する必要がある。そこで、手のひらの輪郭情報を補助情報として用い、輝度の揺らぎに影響されにくい位相限定相関法での補正、位置合わせを行うものとした。
また汎用カメラでの一般生活者本人による撮影画像を元データとすることから、手の開きや照明の違いなど揺らぎがとくに大きいことを考慮し、本人認証時にはそうした揺らぎで生じる違いを反映させた複数種の掌紋画像生成を行って、本人認証の安定性、正確性を高めているという。
さらにカメラ画像からの生体認証の場合、本人の写真や動画を利用したなりすましのリスクもあるため、ディープラーニングなどの機械学習を活用、撮影画像が本物か偽物かを見分けて処理する生体検知技術も搭載している。
日立では、このほか汎用カメラを用いた指静脈技術の開発も進めているといい、今後はさらに生体認証のラインナップを拡充、マルチモーダル化を進めることで多様なニーズに応えていきたいともした。
処理と秘密鍵の管理負荷が大きくなりがちな公開鍵認証で、秘密鍵をスマート端末カメラで取得した生体情報により、都度生成する手法をとったこの方式は、専用装置も不要で、幅広いシーンでの導入と一部のユーザーに限定されない利活用が見込まれる。
日立とKDDI総研では、これまでに培ってきたセキュリティソリューションとも組み合わせつつ、より安全で安心、便利な社会の構築に寄与していきたいとしている。
(画像はプレスリリースより)

株式会社日立製作所/株式会社KDDI総合研究所 ニュースリリース(プレスリリース)
http://www.kddi-research.jp/newsrelease/2018/101101.html