総務省「多言語音声翻訳システムの利活用実証」にJR西日本らが参加
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)、嵯峨野観光鉄道株式会社は16日、総務省の平成28年度「多言語音声翻訳システムの利活用実証」に参加すると発表した。このプロジェクトの実証実験実施団体には、京都市、嵯峨嵐山おもてなしビジョン推進協議会、嵐山保勝会、京都銀行、京福電気鉄道株式会社が選定され、京都市を中心として利活用実証が進められている。
このプロジェクトは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が研究・開発を行う多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra」の技術をベースに開発されたアプリ「VoiceTra. R」を活用し、日本を訪れた外国人観光客とのコミュニケーションをスムーズにすることで、おもてなしを展開、システムの利便性向上を目指すもの。
参画する団体が、地域固有の地名や特産品、観光に関する単語などをシステムへ登録することで、その地域における翻訳精度をアップさせる取り組みが行われている。的確な観光案内やお土産品に関する商品説明、日本や各地域独特の習慣・マナーなどを伝え、より深いレベルでのグローバルコミュニケーションを実現させることが目的だ。その実現により、訪日満足度の向上と観光消費額の拡大も目指している。
誰にとっても使いやすいサービスへ!タブレットはKDDIが提供
今回、JR西日本は嵯峨嵐山駅、嵯峨野観光鉄道はトロッコ嵯峨駅において、この「VoiceTra. R」を活用し、外国人観光客の案内などを実施する。実証実験は9月17日より開始するという。
KDDI株式会社がこれをサポートし、4G LTEタブレットを提供する。タブレットには「VoiceTra. R」をインストールし、駅構内での乗り場や時刻案内をはじめ、トイレなどの駅構内設備、周辺観光地へのアクセスなどの案内を行う。
タブレットには、KDDIが提供する株式会社スマート・ナビの8カ国語対応した多言語通訳サービス「テレビde通訳」アプリもインストールし、これを活かした案内サービスも提供する。検証のため、利用後アンケートなども実施し、さらにシステムの精度を向上させるほか、誰にとっても使いやすいサービス・アプリの実現につなげていく方針だ。
総務省の「多言語音声翻訳システムの利活用実証」は、世界の“言葉の壁”をなくし、グローバルで自由な交流を実現すべく策定した「グローバルコミュニケーション計画」の一環で展開されているもの。東京オリンピック・パラリンピックの開催年でもある2020年までに多言語音声翻訳システムを高度化するとともに、その社会実装を実現することを目指している。
NICTが開発した「VoiceTra」は、旅行会話向けとして高い翻訳精度をもったスマートフォン・タブレット用アプリ。英語ならばおよそTOEIC 600レベルの翻訳が可能だという。交わされる音声を聞き取って翻訳し、発声することが可能で、現在31言語をサポートする。
「VoiceTra. R」は、この「VoiceTra」をもとにリクルートライフスタイル、リクルートコミュニケーションズ、ATR-Trekが開発した実験専用アプリ。京都市内の地名や施設名、特産品などの単語が登録されている。使えば使うほど学習して賢くなるアプリで、音声や対訳文例を多く集めることで、よりスムーズな翻訳が可能になる仕組みとなっていることから、アプリを無償公開し、性能改善を目指す実証実験を進めている。

西日本旅客鉄道株式会社/嵯峨野観光鉄道株式会社 ニュースリリース
http://www.westjr.co.jp/press/article/2016/09KDDI株式会社 プレスリリース
http://news.kddi.com/business-topic/2016/09/2044